コラム

【コロリの草花だより】
vol.33 ホトトギスのデザイン盗用と命名権問題

「コロリの草花だより」第33回は、鳥の名前がそのまま名前として付けられた花にまつわる話です。


虫メガネで覗いて見ると動物のような不思議な世界が広がる
2014年10月 鎌倉


それにしても、大胆なネーミングだ。鳥の名前をそのまま花の名前にしてしまうなんて、いくら似ているからといえ、あり得な〜い! 名前の盗用だ! 渡り鳥のホトトギスは、ウグイスのさえずりもだいぶ上手くなってきた初夏、ちょっと田舎の雑木林などへ行くと「キョッキョ、キョキョキョキョ」と大きな声で鳴き騒いでいる。「特許許可局」とか、「天辺かけたか」とも聞こえる、あの鳥です。声はすれどもウグイス同様に姿は見せないので、さてどんな容姿で色や模様はどうなのか不明、きっと花のホトトギスに似てるんでしょう。これって、本末転倒か。

花のホトトギスは日本や台湾が原産地のユリ科の多年草で、日本の山野には10種以上が自生しているそうだ。夏の終りから冬の気配を感じる晩秋まで、長いあいだ可憐な花を次々に咲かせる。花びらにある斑点模様が鳥のホトトギス(ああ、ややこしい)の胸部羽毛にある斑点に似ているので、鳥の名前を借用することになったらしい。なお、鳥が著作権問題で花を訴えたという話は聞こえてこないが、大きな声で鳴きちらすのは、この件に関する抗議なのかもしれない。直射日光が大嫌いな植物で、湿った木陰や岩場など、地味な環境を好む性質がある。花の色は白地に赤紫の斑点を散らしたもの(写真)が多いが、黄色や白、ピンクなどもある。花だけでなく若葉にも黒い油シミのような斑点が付くので、油点草(ユテンソウ)という別名も持つ。

鳥の名前が花の名前に転用された例としては、サギソウが有名だ。白い花は白鷺が羽ばたく姿に似ている。クジャクソウ(アスター菊)も、細かく枝分かれした枝先いっぱいに花を付けて咲き誇る様子に、孔雀が羽を全開にした時のゴージャスな姿を重ね合わせたもの。この命名パターンでいくとホトトギスソウということになるが、ホトトギス荘みたいで、中央線沿線の学生アパートを連想させ、イマイチか、やっぱり。



プロフィール:田中晃二


通称コロリ。1947年長崎生まれ。教科書のデザインや女性誌『クロワッサン』のアートディレクションなどに関わる。2009年から2年間AZパリ支局に赴任。東北の渓流でイワナ釣り、里山や街の植物観察、旅行や俳句などが趣味。



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