コラム

【コロリの草花だより】
vol.34 冬の到来を告げるツワブキの花

「コロリの草花だより」第34回は、初冬の野山や庭を明るくしてくれる花にまつわる話です。


ツワブキは海の近くが好きだ
2014 年11月 葉山


関東地方の木枯らし1号は、今年10月24日に吹いた。昨年より3日早い観測らしい。どんなことに冬の到来を感じるかは、人によって多種多様。ボージョレヌーボーの解禁日、酉の市に並んだ夜店、軽トラックで焼き芋を売る声、クリスマスツリーの点灯式などなど。私の場合は、晩秋になってツワブキの花を最初に見た日がそうだ。これから寒い季節になるんだなぁと、条件反射のように身構えてしまう。

逗子から葉山あたりの野山には、ツバキ、シイ、モチノキ、タブノキなどの照葉樹が多く茂り、カエデなど落葉する広葉樹は少数派で、秋の紅葉狩りはあまり楽しめない。山は冬でも緑に輝き、海沿いの雑木林を散歩すると、足元には黄色いツワブキの花が鮮やかに咲いている。丸い葉に初冬の陽がキラキラと反射して見えるのは、クチクラと呼ばれる脂質の膜が表面を覆うからだ。葉を乾燥や雨風、紫外線や病害虫などから守ってくれる。ツバキの葉が光って見えるのもクチクラ効果で、照葉樹とは言い得て妙だ。

ツワブキを漢字で書くと「石蕗」。春一番が吹く頃に目覚めるフキノトウとは、同じキク科の多年草だが別種だ。フキノトウから伸びたフキ「蕗」は秋になると枯れてしまうが、ツワブキは寂しくなった初冬の野山や庭を、艶やかな緑の葉と鮮やかな黄色い花で楽しませてくれる貴重な存在だ。



プロフィール:田中晃二


通称コロリ。1947年長崎生まれ。教科書のデザインや女性誌『クロワッサン』のアートディレクションなどに関わる。2009年から2年間AZパリ支局に赴任。東北の渓流でイワナ釣り、里山や街の植物観察、旅行や俳句などが趣味。



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