コラム

【コロリの草花だより】
vol.43 立秋の頃に咲く夏水仙

「コロリの草花だより」第43回は、立秋の頃に咲く夏水仙にまつわる話です。


夏水仙は夏休みの思い出
2015年8月 長野県駒ケ根


「夏おせち」という料理がある。正月に食べるおせち料理を、夏のお盆の季節にも食べてみようと、京都の佃煮屋が売り出したもの。盆と正月の忙しい時期に作りおきの料理を食べましょう、という企画なのだろうが、果たして思惑通りに夏のおせち、売れるだろうか?

「夏水仙」という花がある。スイセンの名前が付いているがヒガンバナ科の多年草だ。ヒガンバナが秋の彼岸を見計らって咲くように、ナツズイセンは立秋を過ぎたお盆の頃に花を付けるので、オボンバナと呼んでもいいような気もする。冬から初夏にかけてスイセンに似た葉をつけ、開花の前に枯れてしまうのはヒガンバナと同じ。庭に花が少なくなる盛夏、冬の水仙のように楚々と涼しげな姿をした花は貴重な存在だ。

夏水仙は中国からの帰化植物で、鱗茎には痺れや嘔吐を起す成分のリコリンを含む有毒植物。その一方でアルツハイマー病の特効薬として注目されるガランタミンという有効成分もあり、使い方で毒にも薬にもなる二重人格の薬用植物なのだ。立秋も過ぎ暑さのピークも一段落、ここで気を緩めて「夏風邪」を引かぬよう元気に秋を迎えたいものだ。 



プロフィール:田中晃二


通称コロリ。1947年長崎生まれ。教科書のデザインや女性誌『クロワッサン』のアートディレクションなどに関わる。2009年から2年間AZパリ支局に赴任。東北の渓流でイワナ釣り、里山や街の植物観察、旅行や俳句などが趣味。



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