コラム

【コロリの草花だより】
vol.45 パリの秋、サンジェルマン・デ・プレ教会の壁面緑化

「コロリの草花だより」第45回は、パリの秋、落ち葉や紅葉にまつわる話です。


壁の下までツタの葉が落ちる頃は、暗くて寒い冬の到来だ
パリ6区サンジェルマン・デ・プレ教会2009年11月


パリの大通りを飾るプラタナス並木は一抱えもありそうな大木が多い。11月になると茶色に枯れた大きな葉はバサバサと、鈴懸の実はボットリ落ちて、ロマンチックとは言いがたい豪快さだ。歩道と車道の段差が落ち葉で見えなくなる頃を見計らってか、ジェット噴射の掃除機を担いだ清掃員が道路側に吹き飛ばし、ブラシの着いた清掃車が回収にまわって来る。公園の中では、角刈りにされたマロニエの巨木の下に膝の高さほど落ち葉の吹きだまりが出現して、子ども達には格好の遊び場になる。大人の私も、バリバリと蹴散らしながら歩くのが楽しい。パリには落ち葉をすぐには掃除せず、しばらく放っておいて季節を楽しもうという気分があるような気もするが、単なる人手不足なのか。

一方セーヌ沿いにはポプラの大木が並び、河面に映える黄色い紅葉は石造りの古い建物と競い合うように、見事な景観を見せてくれる。大通りの街路樹の大半が地味な茶色なので、日本で普通に見られるイチョウやケヤキ、桜など、黄や赤の繊細な紅葉をパリでは望むべくもない。そんな中で、散歩の途中に古い建物の壁を覆うツタの紅葉を見つけたりすると、嬉しくなってしまう。写真はサンジェルマン・デ・プレ教会の壁面、すぐ下はメトロの入り口だ。屋根に近い上の方はすでに落葉している気配、高い壁の上から下へ少しずつ紅葉が進む様子は、山の頂上から麓へ紅葉が移動するようで面白い。

壁面緑化の流れは、パリのケ・ブランリー美術館の垂直庭園(壁)あたりから始まり、今では日本の美術館やカフェ、立体駐車場など、世界中あちこちで目にするようになった。その原点は、壁面を垂直に這って生育するツタや、つる植物を手本にしたのは言うまでもない。壁面緑化した家は夏涼しく冬温かいそうで、地球温暖化に配慮したエコハウスだ。虫も出そうだが。「パリ協定」が11月に発効されるいま、世界にツタの絡まる家を広めて地球を救おう!?



プロフィール:田中晃二


通称コロリ。1947年長崎生まれ。教科書のデザインや女性誌『クロワッサン』のアートディレクションなどに関わる。2009年から2年間AZパリ支局に赴任。東北の渓流でイワナ釣り、里山や街の植物観察、旅行や俳句などが趣味。



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