コラム

【コロリの草花だより】
vol.46 晩秋の磯に咲く野菊、いそぎく

「コロリの草花だより」第46回は、晩秋の磯に咲く野菊にまつわる話です。


鎌倉・由比ケ浜に自生するイソギク
冬も間近なのにミツバチが飛んで来た 2015年12月


冬は突然やって来る。穏やかな秋を経て厳しい冬に移行するのが日本の四季の醍醐味だったはずなのに、近年は気候の変動が激しい。台風が北海道に上陸し、関東の晴天日が減少し、野菜の値段が高騰し、アメリカ大統領選挙は番狂わせ、なんでもかんでも地球温暖化のせい?ではないと思うが、紅葉のピークも終盤を迎えると、散歩していても枯れた草木ばかりで物寂しい。旧暦で10月は神無月、11月は霜月。冬になる前のこの季節を、花無月とでも呼んでみたい。

夏には、海の家が立ち並び海水浴客で賑わった鎌倉由比ガ浜も、今では人影もなく静かな漁村風景に変貌する。小春日和の陽だまりにはミモザに似た黄色い花があわあわと咲き揃っている。白くトリミングされた鮮やかなグリーンの葉も涼しげで、ここだけ季節が夏へ逆転しているかのようだ。この花の名前はイソギク、静岡県から千葉県の磯に自生する野菊の仲間だ。

イソギクの花を間近に観察すると、花びらが無い。キク科の花はヒマワリやマーガレットのように、周りの花びら(舌状花)と丸い顔の部分(筒状花)で構成されるのが一般的だ。イソギクは筒状花だけの集合体なので、まるでミモザの花のように丸顔の球に見える。アザミの花も同様に筒状花だ。タンポポは逆に、舌状花だけが集合したもの。イソギクは強い海風が当たる海岸に生息するので暑さ寒さ乾燥に強く、葉は厚く、裏は銀毛で覆われている。葉の縁が白く見えるのは葉裏の銀毛が表に張り出しているから。育てやすく、花も葉も魅力的なので園芸種もいろいろあるようだ。



プロフィール:田中晃二


通称コロリ。1947年長崎生まれ。教科書のデザインや女性誌『クロワッサン』のアートディレクションなどに関わる。2009年から2年間AZパリ支局に赴任。東北の渓流でイワナ釣り、里山や街の植物観察、旅行や俳句などが趣味。



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