vol.03  こころと体を健康にする自然の力深井みほ子

インタビュー

vol.03  こころと体を健康にする自然の力
深井みほ子

薬膳とヨガの新しい組み合わせでこころと体の健康を目指す「薬膳ヨガ」代表の深井みほ子さんに、自然との関わりの中で生まれたさまざまなエピソードや、取り組みについて話をうかがいました。

vol.03  こころと体を健康にする自然の力深井みほ子

Profile

深井みほ子(Mihoko Fukai)

1969年東京生まれ。体調を崩し2007年よりヨガをはじめる。短期間で改善したのをきっかけに指導者資格を取得。その後中医学に出会い薬膳調理指導員資格を取得。根幹の理念である「自然治癒力」に関する研究を重ね、それを伝える薬膳とヨガのクラスを開始。2012年からはプロ養成コースを設け、後継者の育成に務めている。

ヨガとの出会い、薬膳とのつながり

−−−まず、ヨガをはじめたきっかけについて教えてください。

以前はOLから転職してウェブデザイナーとして働いていたのですが、仕事がハードで体をこわしてしまい、父のすすめでヨガをはじめました。とても合っていたようで、ヨガのレッスンに通ううちに、だんだんと体調がよくなっていったんです。

−−−具体的にはどういうところがよくなったと感じましたか?

体をこわしていた時、普段薬を飲まない私が、3つも薬を飲んでいました。消化器、皮膚、婦人科系の薬です。でも、ヨガをはじめて3ヶ月くらい経ったら、どの薬もいらなくなりました。以前は運動が大嫌いだったのですが、なぜかヨガはうまくできて、汗もよくかくようになって。気づいたら気持ちも明るくなっていました。

−−−体を動かすことで、こころも体も健康になったんですね。

そうです。ヨガをはじめる前までは、苦しかったり悲しかったりして泣くことが多かったのですが、ヨガをやっていると、置かれている状況はまったく変わってないのに、嘘みたいに自分が幸せに思えたんです。37歳にして、それがやっと「運動すること」の効果だということに気づき、感動しました。

−−−そこから、ヨガの講師になることを決意した理由はなんだったのでしょうか?

「運動は人を救う」ことに気づいたことが一番大きかったです。歌の歌詞みたいですが、生きる希望は自分の中にあって、自分自身でつくれる、ということがとても救いになりました。それを生きる希望をなくしてしまっている他の人にも伝えたいと思って、ヨガの講師になることにしました。資格を取ってすぐに、師匠から「来週はあなたが講師です」と言われて。ヨガをやるのと人に伝えるのとは大違いでとてもむずかしかったのですが、講師になることを意識したとたん、これまで自分一人の悩みでくよくよしていたのが嘘みたいに、しっかりしなくちゃと責任感が強くなって、自分がよい方向に変わっていくのを実感しました。

−−−薬膳に出会ったのはどういうタイミングでしたか?

独立してヨガのレッスンをはじめてしばらくして、ヨガは体を健康にすることはわかったけど、なんで胃や腎臓までよくなったのかが説明できないことに違和感を覚えて、もっと勉強したいと思ってたどりついたのが薬膳でした。その年のうちに薬膳の資格も取ったのですが、薬膳の勉強をするにつれ、おもしろいくらいヨガと薬膳の共通点が見つかっていきました。それはまるで、薬膳で学ぶ東洋医学の5つの理念(※本ページ下参照)で、ヨガの答え合わせをさせてもらったような感じでした。むしろ「この理念がないとヨガは成り立たない!」とすら思えてきて。次第に薬膳の理念とヨガのつながりを文章にしてみたり、ヨガのレッスンでも薬膳について話してみたりしながら、薬膳とヨガを融合させたクラスをはじめました。

自然のエネルギーを全身で感じる


−−−「畑ヨガ」や「海ヨガ」「星ヨガ」など、自然の中でのヨガを多く開催されていますが、自然の中でのヨガをはじめたきっかけは何だったのでしょうか?

薬膳の資格を取った頃に、無農薬、耕さない、除草しない、肥料を与えないという自然農法を実践する農園が主宰するいもほりに参加したことがあったのですが、そこで「自然は裏切らない」と強く思ったことがきっかけです。その畑で知ったのは、野菜は太陽や雨など自然に合わせる「整体観念」で生きていて、自然治癒力で甘みをたくわえている、ということでした。それまで教科書の知識でしかなかった理念が実践されているのを目の当たりにして衝撃を受け、すぐにその農園の方に「ここでヨガをさせてください!」とお願いしました。

そして翌年の夏に、その畑でヨガを開催しました。裸足で土の上に立ってヨガをしたのですが、小さな子どもが泣くこともなく、普段は暑さが苦手ですぐに熱中症になってしまう人が1時間のヨガをやり通せたのを見て、太陽と土のエネルギーを確信しました。この頃からようやく「自然は人にエネルギーを与える」と自信を持って言えるようになったんです。

−−−「海ヨガ」はどんなきっかけではじまったのでしょうか?

旅行で沖縄に行ったときに、以前から気になっていた夜明け前の海ヨガをやってみたところ、全身に朝日が当たっているのにも関わらず、どうしてもお腹だけに当たっているような感じがして、お腹がぽかぽかしてきたんです。ヨガでも自分の力でお腹をあたためることはできるのですが、それとは全然違っていて、桁違いのあたたかさでした。そこでも、やはり自然の流れに身を任せるとパワーがもらえるということに確信が持てました。その体験がきっかけとなって、鎌倉の海岸で海ヨガをはじめました。

−−−具体的にはどのようなことをするのですか?

1回40分で、参加者のその日の体調に合わせて当日に流れが決まります。まずは参加者に体で調子の悪いところを聞いて、その症状がどこの内蔵から来ているのか、あたりをつけます。そして、そこに効く運動をみなでやることを説明して、5人いたら5人全員分の不調に効く運動を一連の流れで行います。

あまりポーズはやりません。たとえば「伸び」を、大地や空をイメージしながら、限界まで引き上げてやる。40分の間に10回くらい限界点を設けます。10回も限界にチャレンジすると、自然治癒力が巡り出して、ある程度は自分で治す力がつきます。

−−−参加者の反応はいかがですか?

参加者は、都内在住の20〜30代の女性がメインで、他のレッスンに比べて男性も多いです。初心者の方でも、自然のエネルギーを信じていない方でも、よく「深呼吸がしやすい」とおっしゃいますね。それは、普段呼吸をむずかしく考えてしまっている人でも、自然の中だと何も考えずにできるからだと思います。目線を空に向けてから砂浜に下ろすだけで息を吸いたいという欲が出てくるので、その欲にしたがうだけで深い呼吸ができます。

そしてレッスンの最後には、5割くらいの方が寝てしまいます。でも、寝てもいいんです。ヨガ中の睡眠は、その間眠気を抑えてヨガをしつづけるよりも治癒の効果が高くて、頭痛が治ったり、精神的につらかった人が元気になったりします。

植物が持つ、癒しの効果


−−−食べて学ぶ薬膳レッスンもやっていらっしゃいますが、どういった経緯ではじまったのでしょう?

以前から、ヨガの後に簡単な薬膳料理をつくって食べるというレッスンはしていたのですが、本格的にはじまったのは、フレンチレストランの「ミクニヨコハマ」との出会いからです。ある人から、絶対にそこのシェフと話が合うからと紹介されてお店にうかがったら、入り口に野草が20種類くらい植えてあったんです。そして、実際に出していただいたコースの料理にもカタバミやハーブなどがふんだんに使われていて、すごくうれしくなって。そこからそのシェフと意気投合して、食べて学ぶ「薬膳フレンチ講座」をはじめました。

−−−野草のよさについて教えてください。

野草に出会ったのは、さきほどもお話しした自然農法の農園でした。それまでは野草について何も知らなかったのですが、そこに生えていた野草を食べたら、すごくみずみずしくておいしかったんです。調べてみたら、ぺんぺん草、なずな、よもぎ、ハコベラ、ヨメナ、カタバミなどの野草の栄養価がすごく高いことがわかりました。私のおすすめはカタバミです。そこらへんに生えている小さなクローバーのような野草ですが、すっぱくておいしいですよ。

そこの農園では、最初、固い土だったところに固い根を持つスギナやつくしなどが生えて土を砕き、その翌年にはハコベラやカタバミといったやわらかい野草が生えます。そういった自然の流れに任せておくと土がよくなって、農園の野菜が野草と競うように、強くおいしくなるそうです。その話を聞いて以来、植物も人間も、与えられた環境で最大限に輝くことができる、自然の流れに任せておけば大丈夫、という意識が生まれました。

もっと運動のよさを発信していきたい

−−−今後の展望をお聞かせください。

もっと社会に向けての発信をしていきたいです。そもそも、自分自身が運動することで体調も気持ちも改善した経験を他の人にも知ってもらいたくてヨガ教室をはじめたので、一人でも多くの人の手の届くところに「薬膳ヨガ」を提案したいと思っています。仕事が忙しい人や男性、あまり外に出ない方にこそ体験してほしいんですが、なかなかそういう人たちにリーチできていないのが現状です。そんな中ではじめたのが「企業ヨガ」です。私たちが企業を訪問して、朝の10分間、デスクの前でヨガをします。この活動にはとても手応えを感じていて、もっと多くの企業に福利厚生として導入していただきたいと考えています。

また、自分自身の経験から、ただヨガをやるよりも人に伝える方がもっとその人を幸せにする、強くする、ということがわかったので、これからは薬膳ヨガを伝える講師の育成にも力を入れていくつもりです。



※「薬膳ヨガ」5つの理念
・今を信じて自然に委ねる【整体観念】
・自ら秀でず他を応援する【五行】
・良い面の存在を信じる【陰陽】
・知識を思いやりに使う【四診】
・根本の理由を理解する【経絡】

レッスンの詳細やお申し込みは、
「薬膳ヨガ」のウェブサイト

聞き手・編集:須鼻美緒(AZホールディングス) 撮影:水野聖二

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